機能性と被る部分もありますが、義歯の設計には本来「こわれない」ということが要件としてあります。
うすく小さい義歯は、患者さん受けは良いのですが長期的にみると、①こわれる、②その後の展開に適応しにくくなる、などの障害がでてきます。
義歯の損耗率が高い(安定性が低い)と、口の中でのかみ合わせのポイントも安定しないため、次に義歯を作るくらいの不具合が起きた頃には、より難しい症例へと進化してしまうことは少なくありません。
青年期や活動性の高い時期や歯がたくさん残っている時期は、うすく小さな義歯でも機能的な障害はあまり出ないものの、歯のない部分が多くなると、義歯の面積そのものを大きくしないと義歯が安定しません。高齢者医療を担当していると、保存していた歯が介護状態になって悪化し、義歯を大規模改修しなくてはいけないものの大ぶりの義歯に年齢がいってからでは適応できない方を拝見することは少なくありません。歯の保存は良いことですが、戦略的に行える判断が不可欠であることは確かです。75歳前後を目安にその後の状況を考えたモデルチェンジはあって然るかもしれません。
保険診療では、レジンというピンクの樹脂がベースになるため、強度を確保するためには厚みが出る・温度が伝わらないなどのデメリットがあります。金属を効果的に使用することで薄く・熱伝導を向上することはできますが、私費の義歯は設計によって修理がしにくく高額な費用負担が再度かかるデメリットもあります。
ご自身の歯が、どこに弱点があり、長期的にどこを残していくか、そしてその時にどんな状態に自分がなっているのかを想像しながら歯科医師と義歯設計について相談していきましょう。
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